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FCバルセロナの今夏

今夏の移籍市場も非常な賑わいを見せてくれましたが、いい意味でも悪い意味でも最もお騒がせなクラブだったのは、FCバルセロナだといってもよさそうです。そんなバルセロナの今夏の動きを、今一度振り返っておきたいと思います。

財政問題

サラリーキャップ、マイナス1億4,400万€

ラ・リーガには、固有のサラリーキャップ制度が導入されています。これは各クラブの収入に応じて移籍金などを含めたチームの人件費を70%程度に制限するもので、選手年棒の高騰を防ぐことや、各チームの戦力の均衡化を目的として導入されているものです。

サラリーキャップを超過すると新たに選手を登録できなくなってしまうため、ラ・リーガではどのクラブも人権費を決められた金額以内におさめる努力をしています。

バルサは昨シーズン末の段階で、使用限度額がマイナス1億4,400万€となっておりました。使用限度額がマイナスに振れているクラブは、この時点でのラ・リーガ各クラブの内では唯一となります。1

マイナスのサラリーキャップをクリアするためには、収入を増やすか、人件費を削るか、あるいはその両方が必要になります。サラリーキャップの使用限度額は、前シーズンの収入によってきまるため、会計年度の終了日である6月30日までに、差し迫って資金を調達する必要がありました。

それに対する梃子を、ラポルタ会長は用意していたようです。

第一の梃子: ラ・リーガのテレビ放映権の10%を売却

会計年度終了日の6月30日正午すぎ、米国の投資会社である Sixth Street へ今後25年間のラ・リーガのテレビ放映権の10%を売却することが発表されました。これにより2億6,700万€の収益を得ました。Sixth Street は世界のスポーツとメディアに対する投資実績のある会社であり、レアル・マドリーもパートナーシップ契約を結んでいます。

第一の梃子により、まずはサラリーキャップ上限を引き上げることができたようです。

第二の梃子: ラ・リーガのテレビ放映権の15%をさらに売却

7月に入り、またもや Sixth Street への売却が成立しました。今回は15%を4億€で売却することになり、合計で 2047 年までのクラブのテレビ放映権の25%を売却することとなりました。今回の売却により、今夏の移籍市場に投下する資金を調達し、レヴァンドフスキラフィーニャの獲得が可能になりました。

第三の梃子: バルサ・スタジオの株式 24.5%を売却

バルサ・スタジオとは、バルサTVやSNSなど、クラブのオンラインビジネスを手掛けるプロジェクトのことです。売却金額は1億€で、売却先はファントークンを取り扱う Socios.com という会社です。

このように未来のさまざまな資産を売りに出し、選手を登録した状態で開幕を迎えられるように努めてきたわけですが、それでもまだ開幕戦の前日の時点で、サラリーキャップ規定により新加入選手の誰1人として開幕戦に登録できない状態でした。

第四の梃子: バルサ・スタジオの株式 24.5%をさらに売却

そこでラポルタは、さらに第四の梃子を発動しました。Socios.com への売却に続き、さらにバルサ・スタジオの株式24.5%を Orpheus Media へ売却しました。売却金額は同様に1億€です。

この土壇場での売却成立により、これらの売却の契約書を保証書としてラ・リーガ掲示することによって、クンデ以外のすべての新加入選手を登録することができました。

クンデ登録問題

こうしてスタートしたバルサの22-23シーズンですが、第2節が終わった段階でもクンデを選手登録できない状態が続いておりました。このまま8月31日までに登録できない場合、クンデは契約を破棄して別のクラブに加入することができるようになってしまいます。

バルサが解決策として利用したのは、クラブとSAD(スポーツ株式会社)の予算に関する規則、ラス・ノルマスの第92条でした。この条文の規定では、保証は現金または銀行保証で行う必要があり、その提供者は株主かクラブ外の第三者でなければならないとされています。ラポルタとクラブ会計のフェラン・オリーブは、株主または第三者の立場で、個人的にそれぞれ275万€ずつの約束手形と現金550万€、あわせて1100万€を個人保証として預けたとのことです。2

こうして登録定員を増やすことに成功し、晴れてクンデを登録することに成功しました。混沌たる展開を繰り広げた財政問題は、一応の決着を見せたといえます。

人員整理

財政問題と並行して、選手の獲得と人員整理は進んで行きました。そんな現場の選手たちをめぐる動きもまた、振り返っておきたいものです。

リキ・プッチ、ネト、ウンティティ、ブライスワイト、ラングレ、ミンゲサといったシャビ体制の構想外となっている選手たちを、次々に放出していきました。これによって給与の支払い総額を引き下げていきます。

またデンベレ、セルジ・ロベルトは年棒ダウンの新契約にサインすることを選び、クラブに残留することになりました。

しかし、これでもまだサラリーキャップを解決するには至りませんでした。クラブは引き続き大掛かりな人員整理を、つまりはクラブ最大の高給取りの1人、オランダ代表MFフレンキー・デ・ヨングの放出をなんとしても成し遂げようとしたようです。

フレンキー問題

フレンキー・デ・ヨングが優秀な選手であることは疑いの余地のないことではありますが、クラブの判断は、より給料の安いペドリやガビによって、インテリオールのポジションは賄うことができるというものでした。

マンチェスター・ユナイテッドとの交渉が、今夏の移籍市場を通じて続いておりました。契約は 8,500万€とも言われ、クラブ間合意まで進んだとも報じられました。しかしフレンキー自身の意志は固く、彼は残留を譲りませんでした。

バルトメウ会長時代に結ばれたフレンキーとの契約では、当初の年棒を大幅にダウンさせる代わりに、22-23シーズンからは大幅に年棒が上がる仕組みになっていました。つまりは将来の財源をあてにした契約であり、それが当時のフロントの皮算用であるとはいえ、双方合意の上での契約であることは明白でした。

ところが現会長のラポルタは、バルトメウ会長時代に結ばれたその契約を「犯罪性のある」ものと指摘し、訴訟の構えを見せて脅迫しました。

しかしシャビから戦力として計算されていることもあり、フレンキーは圧力に屈することはありませんでした。

新加入

暗い側面ばかり思い出されますが、そればかりではなかったはずです。ここからは新加入選手の顔ぶれを見て、他クラブからの羨望の的となったFCバルセロナの姿を振り返っておこうと思います。

待望の9番

まずは7月、長年バイエルン・ミュンヘンの大エースとして君臨した、ポーランドの怪物ストライカー、ロベルト・レヴァンドフスキの移籍が正式に発表されました。開幕からの活躍ぶりをみると、近年のバルサにおける9番の選手たちとは別格の数字を残しています。34歳に達したレヴァンドフスキも、ベテランが数多く活躍するリーガを舞台に、さらなる偉大な記録を残していくことになるでしょう。移籍金は 4,500万€。

プレミアリーグの目玉選手

リーズのブラジル人FWラフィーニャは、アーセナルトッテナム・ホットスパーなど、国内ビッグクラブへ売却されるかと思われていました。バルサが獲得を希望しようとも、当時の財務状況がそれを許すものではありませんでした。第一の梃子ののち、ラフィーニャバルサとの契約を選びました。移籍金は 5,500万€。

強奪

続いてセビージャから、フランス人DFクンデを獲得しました。昨シーズンまでの流れからチェルシーへの加入が既定路線かと思っておりましたが、結果的にはチェルシーよりも高い金額を用意したバルサが契約を勝ち取ったようです。移籍金は 6,000万€。

フリーでの獲得

資金難にあえぐバルサにとって非常にありがたい話として、フリーでの選手獲得も進んでいました。チェルシーからクリステンセン、ACミランからケシエをそれぞれフリーで獲得しました。

Fecha límite

デッドラインデー。今夏のバルサは、最終日までドタバタと慌ただしい動きをみせました。デストのACミラン移籍が決まり、デパイが自らのSNSで残留を発表、オーバメヤンチェルシーへ移籍、代わりに加わったのは下部組織育ちのベジェリンとマルコス・アロンソでした。

今後について

なんとかすべての新加入選手を登録する目処がたったバルサですが、問題はここから先も継続していきます。シャビのチームは結果を出し続けなければならず、それを果たしてもなお毎年のように財政問題に直面することになります。

未来を抵当に入れて金を借りるような動きを続けてきた今夏。ピッチ上では早くもその成果が見えつつありますが、先々も続いていく財政問題のことを思うと、クレが安心して眠れる日がやってくるのは遠い未来のことになりそうです。